料理支える 責任と意欲 – 読売新聞



 ◇三朝温泉「旅館大橋」仲居頭 杉本良太さん27

 国内外から年間35万人以上が訪れる国内屈指の温泉地・三朝温泉(三朝町)。温泉街の一角にある1932年(昭和7年)創業の老舗「旅館大橋」で昨秋、7人の仲居を取りまとめる「仲居頭」を任された。男性の仲居頭は県内でも珍しいといい、「まだまだ自分は新米。みんなの信頼を得られるよう、頑張りたい」と意気込む。

 倉吉市内の高校を卒業後、介護福祉の仕事を経て、2009年11月に知人の紹介で旅館大橋に就職。調理場で料理人の求めに応じて皿や器を用意する「中番」と呼ばれる業務を担当した。

 転機が訪れたのは1年後。突然、仲居に配置転換された。男性の仲居は三朝温泉街でも聞いたことがなく、「本当に自分に務まるのか」と戸惑った。「がむしゃらに仕事と向き合う積極的な姿勢と、目配りの利いた的確な行動。何より穏やかな性格が接客向きと感じた」。総料理長を兼務する知久馬惣一社長(69)は振り返る。

 当時は、まだ20歳前後。年配の女性客からは「孫みたいで、かわいげがある」と喜ばれる一方、言葉遣いや立ち居振る舞いなどの所作が不十分な面もあり、常連客から怒られることも多かった。帰宅する車中、ハンドルを握りながら、ふがいなさに幾度となく涙がこぼれた。

 支えになったのは、「俺たちが作った料理の魅力は、仲居で決まる」という知久馬社長の言葉だった。「料理人の心をお客様に届けることこそ仲居の役割」。責任の重さを痛感すると同時に、大きなやりがいを抱いた。

 客間に届ける料理は、すべて手運び。「台車に載せると、振動で料理の形が崩れる」という知久馬社長の考えからだ。細部にまで気を配る料理人の心意気。それに応えようと、食材の種類から調理方法まで副料理長に細かく質問し、メモに記して頭にたたき込むことを自らに課してきた。

 仲居として約7年勤めた昨年11月、仲居頭だった岡本ヨシエさん(69)から〈後継指名〉を受けた。後進に譲ることを考えたとき、「任せるのは彼しかいない」と思えるほど全幅の信頼があったといい、社長も快諾した。

 仲居頭になって約4か月、年上の仲居に囲まれながら、先頭に立って接客サービスに努める。多忙な日々でゆっくりする間もないが、「お客様の笑顔が何よりの癒やし。『この旅館に泊まって良かった』と思ってもらえるよう、これからも頑張っていきたい」と充実した表情を見せた。(岩倉誠)

 ◆すぎもと・りょうた 倉吉市出身。高校時代に始めたドラムが趣味で、休日には、自宅のドラムセットで、お気に入りの1970年代のハードロックを演奏して過ごす。「旅館大橋」(0858・43・0211)は、本館や離れなどが国の登録有形文化財に指定され、5か所の自家源泉を持つラジウム温泉が人気を集めている。





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