<人あり>身近な話 故郷で描く – 読売新聞



◆漫画家・武田愛子さん(31)

 少女漫画の月刊誌「ココハナ」(集英社)で昨年12月から、漫画家を目指すアルバイト書店員とユニークな店長らとの日常をコミカルに描く「ほなみ店長は働かない」を不定期連載している。自身も、鳥取市内の書店でバイト中。「実体験がベース。本屋さんって楽しそう、と思う人が増えてくれれば」と笑う。

 幼稚園の頃、チラシの裏にお姫様の絵を描くと、友達から「上手」「ほしい」とほめられ、絵が好きになった。小学生で雑誌「りぼん」に熱中。「落ち込んだ時、漫画を読むと明るくなれた。私も、誰かを元気づけられるような漫画を描きたいと思うようになった」

 県立高校を出て鳥取大地域学部に進学。勉強に夢中になり、漫画はほとんど描かなかったというが、地域おこしをテーマにした研究や調査で県内の農村を訪れ、住民らと交流した経験は、「人のつながりや、目の届く範囲の物事を扱う大人の女性向けの漫画を描いている今、とても役に立っている」と力を込める。

 大学卒業後、同市内の広告会社に勤めたが、25歳のとき、「本気で漫画を描こう」と一念発起。東京の漫画家養成校に2年通い、シナリオの書き方や道具の使い方などを学んだ。

 養成校の卒業制作で描いた漫画をココハナの新人賞に初めて応募。結果は選外だった。プロの厳しさを痛感したが、「ここからは上がるだけ。頑張ろう」と自分を奮い立たせた。

 3度目の挑戦で、農村活性化を図るコンサルタント会社員の成長を描いた「あぐりデイズ」が入賞。担当編集者から「絵や物語はまだまだだが、他にない感じの作品」と評価された。

 「地方でも描ける」と、2015年に帰郷。7度目に応募した恋愛コメディー「あなたのごちそう」が、雑誌掲載を確約される「銅賞」に輝き、16年2月、同作で漫画家デビューした。父親をモデルにしたという手料理マニアのイケメンが登場する作品で、「読み手を楽しませる展開を心がけたのがよかった」と振り返る。

 持ち味は、ほのぼのとした人柄の登場人物と、笑いの要素を盛り込む構成力。「ほなみ店長――」では、主人公が本に自動でビニールをかける機械を「店長より役に立つ」と無邪気にからかったり、「毎日これだけたくさんの新刊が出てるのに、投稿歴5年目でいまだにデビューすらできない私って」と落ち込んだりする姿が、ほほ笑ましい。

 鳥取に戻る時、周囲からは「都会を離れると、ダメになる」と心配されたという。しかし、知人の農作業を手伝ったり、狩猟の見学をしたりして、「食べ物がおいしく、自然が豊か。農村にも漁村にも、興味深い活動をしている人がたくさんいて、ネタには困らない。鳥取にいるからこそ漫画が描けている」と感じる。

 目指すのは、高橋留美子さんの名作「めぞん一刻」のような人情味あふれる恋愛物語。「人間関係や身近な出来事を丁寧に面白く描きたい。作品を通じて、鳥取にも興味を持ってもらえたら、うれしい」と目を輝かせる。(中田敦之)

 ◇<たけだ・あいこ> 鳥取市出身。「ほなみ店長は働かない」が不定期掲載されている「ココハナ」は毎月28日発売。漫画のアイデアは、自宅近くの温泉につかっている時に「頭が柔らかくなると、浮かびやすい」といい、ついつい長風呂になるという。他の作品に、鳥取の梨農園を舞台にした「しあわせの実」など。





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