津波浸水区域内のまま建て替え計画 住民に不安も – 毎日新聞



津波浸水区域内に建つ現在の御坊市庁舎=山本芳博撮影



 南海トラフ巨大地震の津波浸水区域内にある和歌山県の御坊市庁舎について、市が建て替えを計画している。庁舎移転を済ませたり計画したりしている県内の他市町は、浸水区域内などから高台への移転を進めているが、御坊市では現在地で建て替える方向で議論が進んでいる。高台移転を求める声も住民の間に根強く、不安をぬぐえるのかなど課題は残っている。【山本芳博】

 1973年6月建設の庁舎は現在の耐震基準を満たしておらず、市は2019年度に建て替え事業に着手して21年度中に建設し、22年度に供用を始める方針だ。

 同市薗の現庁舎は、市中心部の国道42号に面して利便性が高い一方で、南海トラフ巨大地震による津波浸水深が3.2メートルと想定される。このため焦点となったのは、来庁者の利便性や周辺住民の一時避難場所としての役割を優先する「現在地」か、浸水を回避して復興拠点としての機能を重んじる津波浸水区域外への「移転」かの選択だ。移転候補地としては、JR御坊駅(同市湯川町小松原)周辺や女子短大跡地(同市塩屋町北塩屋)が挙がった。

 海南市や印南町、湯浅町などは、高台へ庁舎を移転した。一方、兵庫県洲本市は津波浸水区域内で津波浸水深の約2倍の高さにかさ上げし、周囲に防潮板を設けて新庁舎を建てており、御坊市議会などは現地を視察した。

 昨年10月には市が来庁者にアンケートをとった。486件の回答のうち、新庁舎建設で重要と考える項目(複数回答)では「大地震に対して高い安全性と耐久性があること」が最多の330件で、「津波災害時の緊急的な避難場所としての機能を有していること」が309件で続いた。自由意見では、高台移転を求める声が現在地の3倍程度あった。関係団体の代表12人による「市民懇話会」(会長、塩路泰弘・御坊商工会議所専務理事)は両論併記した提言書を、3月26日に柏木征夫市長へ提出している。

 柏木市長は毎日新聞の取材に対し、「現在地の近くには法務局や郵便局などがあり便利だ。市中心部に適当な高台もなく、人口の多くを占める周辺住民を置いて遠くへ移転するわけにもいかない」と、現在地で建て替える方針を示唆した。6月議会で表明するか検討している。全議員13人で調査特別委員会をつくり議論してきた市議会でも、移転派は少数だ。

 現在地建て替えの場合、建物1階を津波が通り抜けるよう柱だけにする「ピロティ方式」や3.5メートルの盛り土の案が出ているが、柏木市長は「予算に限度もある。複数業者の提案から御坊に合った案を選ぶプロポーザル方式にしたい」と話す。

 懇話会メンバーの小池信昭・和歌山高専教授(津波工学)は「全国的にも例の少ない津波浸水区域内での新庁舎建設を進めるなら、浸水を防ぐために周囲の海や日高川に防潮壁を造るよう、国や県へ働きかける必要がある」と指摘している。






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