自家製有機肥料で米・野菜栽培 – Viewpoint



発酵堆肥で土壌を改良

田中農場会長 田中正保氏に聞く

 中国山地の麓、鳥取県八頭町にある田中農場は1980年の創立で96年有限会社化。2004年から化学肥料を一切使わず、自製の有機肥料(牛ふん完熟堆肥)による米と野菜の栽培で注目され、持続性の高い生産方式で「エコファーマー」の認定を受けている。17年に代表取締役を息子へ引き継いだ田中正保会長に話を聞いた。
(多田則明)

保肥力向上、排水も良く
農薬使わず手間掛ける

経営の概要は。

田中正保氏

 たなか・まさやす 1951年鳥取県八頭町生まれ。倉吉農業高校を卒業後、埼玉種畜牧場で1年間研修し、養豚業を開始。構造改善事業と政府の転作奨励をきっかけに80年、大豆・麦を中心に田中農場を設立し、後に、米中心に転換した。

 現在、パートを含め約25人で約120ヘクタールの田んぼで、コシヒカリを中心に酒米の山田錦、飼料米、大豆、黒豆、小豆、白ねぎなどを生産し、みそや日本酒、ねぎ酢、もち、きな粉などの加工食品と合わせ、年間約1億5000万円を売り上げています。

 生産物はスーパーやレストラン、全国の顧客に直販し、白ねぎは鳥取県の食材輸出策の一環で台湾にも輸出しています。日本のスーパーなら200円の白ねぎが百貨店で600円で売られています。

 ほとんど農家から借りた約300枚の田んぼは半径8キロ、20ほどの集落にまたがっているため、大型農機はトラックで運びます。構造改善された田んぼは3ヘクタールが基本ですが、小さいのもあります。

田んぼの管理は。

 耕運機にレーザーレベラを取り付け耕し、100メートルにつき2~3センチの勾配を付けてならす傾斜水田が特徴で、水が速く全面に行き渡り、雨が降っても早く乾くので管理しやすくなります。そして、モグラ除(よ)けのあぜシートを挟んであぜ塗り機であぜを作ります。

 傾斜水田としっかりしたあぜの条件が整えば、田植え後の1回の除草剤だけで、雑草を抑えられます。それでも雑草が生えるとスポット的に除草剤を使います。

 田んぼを耕す深さは通常10センチ程度ですが、30センチの深耕を標準にしています。深く耕すことで保肥力と排水が良くなり、作物が根をしっかり張るからです。昭和50年代の構造改善事業で田んぼを広げ、ならしたので、土壌の条件が悪化していました。その改良のため100馬力の耕運機で深耕を始め、周りが黒毛和牛の繁殖地で畜産業が盛んだったので、堆肥を投入し、10年かけて土壌を改良しました。山に近い水田なので水はけが悪く、野菜は作りにくいのですが、深耕し、排水をよくすると、畑作にも使えるようになります。

土づくりの基本は。

 秋に稲刈りを終えたらすぐ浅く耕し、土と稲わらを混ぜ合わせます。稲刈り直後の土はまだ温かく、微生物が活発に動いているので、稲わらの腐植が進み、排水が向上し、土中に空気が入るからです。かつては裏作に麦を栽培していましたが、今は一毛作にして稲刈り後は土作りの期間です。

 土作りには有機質の堆肥が重要で、地元の畜産農家からもらった堆肥に籾殻(もみがら)やオカラや米ぬかなどを混ぜ、バックホバーで4~5回切り返し発酵させています。良い堆肥は、みそやしょう油に似て甘酸っぱい香りがします。そんな発酵堆肥を田んぼに散布します。

施肥の仕方は。

 基本的に田植え前に有機肥料をやり、不足気味だと田植え直後にペレット状の有機肥料を入れるので、普通の農家に比べると市販の肥料は3分の1くらいです。穂肥や実肥、いわゆる一発肥も使いません。

苗にいもち病対策などの農薬は。

 農場では毎年、2万2000~2万3000枚のポット苗を自前で立てていますが、苗土にも農薬は使いません。昔の農家のように、もみをまく前に湯で温度消毒するだけです。

 防除の基本は地力や排水で作物の力を強めることで、作物が健全に育つとそれほど病虫害に悩まされることはありません。カメムシやハスモンヨトウなどには、一部酵素やミネラル系の阻害剤を使います。

畑作との兼用は。

 水田には素晴らしい機能があります。水は田んぼにミネラルを補給し、雑草が生えるのを防ぎ、夏場に水温が上がると土壌消毒ができます。畑作を続けていると次第に地力が衰えてくるので、1年大豆やねぎを作ると、次の3~4年は水田にして地力を回復させます。

白ねぎ畑では手作業で草取りをしていますが。

 畑作でも除草剤は極力使わないので、大豆は管理機による土寄せで、ねぎには手作業による草取りで手間をかけています。台湾に輸出できているのも農薬を使わないからです。手間にお金を払えるようにすることで地域の雇用が増えます。

食品加工は。

 収益性を向上させ、通年の仕事を確保するためです。酒米は七つの酒蔵に納め、酒の小売免許も取得したので、野菜とのセット商品などに使っています。主に専門の加工業者に委託し、みそなども田中農場の材料を使い、添加物なしで製造してもらっています。

集落営農や集団営農の多くが、高齢化や後継者不足に直面しています。

 地域の農地を守るという考え方から、消費者にアピールできる農産物の生産に転換していかないと、補助金なしには運営できなくなります。集落の維持より農地をどう使えば価値を生むか本気で考えるべきです。





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